直木賞作家の村山由佳さんの筆による感動の一冊を紹介します。
2013年 講談社刊『天翔る(あまかける)』
この本を見つけたのが、
なにをかくそうヨメなのです。
図書館で借りる本を「乗馬 北海道」などで検索して
見つけた本です。
わけありで不登校だった女の子が
ひょんなことから、
ある乗馬クラブに通うことになったのです。
そこの個性的な牧場経営者、
そして、牧場に関係する人々との関わりを通して
成長していく様子を描いた物語です。
特に、乗馬が上達する様子や、
「馬と人」、「人と人」の
心の関わりが自然に描かれており、
何度も涙が出てくる内容でした。
特記すべきことは、登場するひとりひとりが、
大切なものを失って傷ついたままでいます。
ボクは馬を通して
傷が傷跡になっていくように思うのです。
馬と人とが、光へ向かってひたむきに歩むことによって。
種明かしをするつもりはありませんが、
この作品で作者が一番言いたかったことは
次のことだと思うのです。(以下引用)
「今この国にいる馬たちは、人が乗らなかったら生きていく道がないの。乗る人の人口が多くなればなるだけ、馬も生きていけるようになる。死ななくて済む馬が一頭でも増える。」
ボクはこのことには激しく同意します。
僕たちが住んでいるこの国の、馬を取り巻く状況は
とても厳しいものがあるのは皆さんもご存じだと思います。
そこを作者は力を込めて強調したかったのだと思うのです。
馬を愛する人がひとりでも増えますように。
乗馬を楽しむ人がひとりでも増えますように。
天寿を全うする馬が一頭でも増えますように。
このような思いに共感できる、とても良い本です。
さらにもっと言うと、上の引用の『馬』を『人』に、
『乗る』を『関わる』に置き換えてみると、
もっと深い意味があるように思えてならないのです。
「今この国にいる人たちは、人が関わらなかったら生きていく道がないの。関わる人の人口が多くなればなるだけ、人も生きていけるようになる。死ななくて済む人が一人でも増える。」
というように、馬だけではなく、
人と人との関わりの大切さを教えているように思うのです。
深読みと言われるかも知れませんが、
こう読まずにはいられないのです。
私たちが持っている、心の傷とどう向き合うのか。
答えなど無いのかも知れませんが、
人を通して示されることがあります。
馬を通して示されることがあります。
何かを感じることができる一冊です。
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